横山秀夫

真相 ■

真相 (双葉文庫)横山 秀夫かなり重いです
横山作品の中でも特に重い内容だと思う。

ハラハラしながら読みすすめるうちに各話とも主人公に感情移入してしまうのは本に入り込みやすい私の性格か、それとも著者の力量なのか。

なんとか悪事が明るみに出ないものか、幸せに暮らして欲しい、と思うものの結果的には。。。。

当たり前のことなのに妙に悲しくなってしまう最後が用意されている。

読後感が暗いが、登場人物が人間臭くて面白かったと思う。

隱れてゐる「眞實」
2003年に刊行された、横山秀夫の6作目の短篇集。

5作品が收録されてゐる。

いづれの作品も、ある出來事の裏に隱れてゐる「眞實」を描くことで共通してゐる。

「眞相」

10年前に息子を殺された事件の犯人が逮捕された。

そして、犯人の供述から明らかになつた息子の知られざる「顏」。

「18番ホール」

村長選に出馬した主人公の眞の動機は何か。

樂勝の筈だつた選擧戰が苦しい戰ひとなつてゆくとともに、主人公の過去が明かされてゆく。

「不眠」

リストラされた45歳の主人公のアルバイトは製藥會社の治驗藥の被驗者である。

その所爲で不眠症になつた主人公が眞夜中の散歩で目撃したのは・・・

「花輪の海」

「あなたにとつて、これまで一番嬉しかつたことは何ですか」

再就職の面接で聞かれた質問は、主人公に「友人が死んだ時」を思ひ出させた。

「他人の家」

前科のあることをインターネットで暴露され、住んでゐるアパートを追ひ出されることになつた夫婦。

彼らを助けてくれたのは、毎朝、贖罪のつもりでゴミ拾ひをしてゐる時に知合つた老人だつた。

老人の薦めで養子となり、老人が亡くなつた後、その老人の家に住むことになつた夫婦だつたが・・・

いづれの作品も讀みごたへのあるものだ。

表題作の「眞相」では、「妻」といふ存在の強さを思ひ知らされた氣がした。

「不眠」では、リストラされた中年のやるせなさを痛感させられた。

「他人の家」では、最後の「眞相」に驚かされたと同時に、この夫婦はこれからどのやうな人生を選擇するのだらうかと思はされた。

横山氏は短編より長編の方が魅力を感じます
正直これが本当に横山秀夫の書いた作品?と疑問を感じました。 今まで氏の作品は長編しか読んだことがなかったせいかもしれませんが・・・。

「真相」は重松清、「18番ホール」は東野圭吾の作風と似ていると思いました。 逆を言えば、横山秀夫の作風は幅が広いといえるのかもしれませんけどね・・・。

真相 (双葉文庫)

時差ぼけ 睡眠薬 種類 睡眠障害 薬

陰の季節 ■

陰の季節 (文春文庫)横山 秀夫娯楽小説の醍醐味が詰まった短編集
友人に薦められて初めて読んだ横山秀夫の小説です。

多くのレビューにあるとおり、確かに面白い!

警察内部で起こる事件を背景として、

丹念に描かれた立身出世の羨望や計算が主人公をかきたて、

ストーリがーテンポよく進行していきます。

もちろんスリリングな筋書きだけでなく、

予期せぬ驚きの結末にページを繰る手が止まりません。

本書の最後に収められている「鞄」を読む終えると同時に、

同氏の文庫本を買い増してしまいました。

横山秀夫を読むのであればまずこの一冊
横山秀夫といえば今やミステリー界のエースですよね。『クライマーズ・ハイ』

は読みましたが、次に読むのは、彼が最初に賞を受けた作品を読もうと思いました。

最初に賞を受けた作品は作者のそれ以降の創作の基点となっている事が多く、

作家を理解するうえで有用です。その意味で横山秀夫を知りたいと思うのなら

(作者目線で作品を読むのであれば)最初に読むべきなのは『半落ち』でもなく、

『臨場』でもなく、本作なのではないでしょうか。

私自身、就職後一貫して営業部門に所属しており、自分が勤務している会社であっても

管理部門というのはブラックボックスです。そのためどうしても一歩引いて彼らに

接しています。特に「新入社員のときからずっと人事でした」なんて人間もいて

彼らに組織の運営を任せられるのか?と疑問に思っています。

本作を読んだからといって、管理部門の人の「気持ちが分かりました」とか、

「彼らも大変なんだなぁ」と単純に解った気にはなれませんが、彼らの仕事の

一断面を見る事ができた事は収穫でした。

もちろん読み物としても楽しませてもらいましたので、☆4つです。

裏方専門の警察小説
警察の内部の人間模様や、内部で起きた事件などを描いている。

人事を担当する人間の苦悩や、ある誹謗中傷から巻き起こった

警察人生を狂わせる出来事や、婦警が謎の失踪をした話や、

議員を相手に飛び回る秘書課の人間が落とし穴に落とされる話など、

全部で4編の短編集。

婦警の謎の失踪は、失踪した婦警は「FACE」という小説のヒロインに

なっているから、またそちらの視点から読むのも面白い。

この話では、上司の婦警の視点から物語が進んでいる。

それぞれの話が、別の人物の視点から描かれており、一話目に出てくる

二渡という人事の男が、他の主人公たちから見ると、脅威の人間のように

描かれているのが面白い。

起こる事件は、内部での些細なものだから、刑事が出てくるわけではないけど、

謎解き要素もあって、とても深い事情も絡んでいて、ずっしりした読後感がある。
陰の季節 (文春文庫)
睡眠障害 病院 メラトニン 不眠症 原因

影踏み (祥伝社文庫 よ 5-1)

影踏み (祥伝社文庫 よ 5-1)横山 秀夫まぁまぁ。
淡々と進む犯罪者目線の小説。

特に面白かった!という感想は無いです。

連作短編集です
横山さんも有名なので一度読んでみようと思っていました。

ちょうど新刊が出ていたのでそれを。

長編だと思って読んでいたら、話がいろいろ入ってくるのであれ??と思っていたら、連作短編集というものだったようです。

主人公は同じなので長編と変わりないのですが(^^;)

主人公の真壁修一は頭もよく学歴もありながら双子の弟が元で一家は破滅に向かってしまい、それからは忍び込み(夜、人が寝静まった家に入る泥棒)として生活している。しかし逮捕され2年の刑期を終えたところから話が始まります。

話は修一の一人称ではあるんだけど、頭では双子の弟の声が響き、いつでも二人が会話しているように書かれています。

これが真壁の弟を失った事からの自責の念から作り出したもうひとりの自分(弟)なのか、それとも本当に弟の思いがのりうつっていたのかは分かりませんが、この物語の面白いところであるのかもしれません。

そして弟と共に愛した久子という女性の存在。

小説を読んでいると真壁は忍び込みを続けているんだけど、探偵のように思えてきます。

犯罪を犯して生活しているんだけど何か一本、筋が通っているような男臭い無骨な感じがミステリーでありながらハードボイルドのような面もあって。

最終的には弟は昇華されてゆくのですが、その後修一が真っ当な道に戻ったのかは、久子の元に戻ったのかは分かりませんが、これが転機になって新たな道を歩んでいったんだと思います。

面白かった
横山氏の作品を読むのは、本作が初めてでした。

他作家の探偵ものや刑事ものの作品は、これまでにもいくつか読んだ事がありますが、

それらと比べても頭一つ抜き出ている感じがしました。

読者を引き込む描写やストーリーはもちろん素晴らしいのですが、なによりも主人公の設定が秀逸だったと思います。

一見ファンタジーちっくに捉えてしまいそうになる弟の存在。

実はこれ、ちゃんとした裏づけをもって創られたかなりリアルな存在だったんですね。

・拭いきれない過去の事件

・兄弟の葛藤・・・嫉妬

・一卵性双生児

ネタバレは控えたいので、直接的な表現は避けますが、

心理学を学んでいる方やそういったミステリー小説を多く読んでいる方にはピンとくるかもしれませんね。

物語を追うだけでも面白いですが、そういった部分を深読みしていくと面白さは倍以上になると思います。

真壁の孤独な物語。

多くの人に読んでほしい作品です。
影踏み (祥伝社文庫 よ 5-1)

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ルパンの消息 (カッパノベルス)

ルパンの消息 (カッパノベルス)横山 秀夫ある意味一番好きかも
横山秀夫の作品をずっと読んできた。

警察小説の独自の切り口がとても新鮮な作家で、フアンになって今まで来た。

本作品は、その横山のまぼろしの処女作だと言うが、そういう事を知らずに、要するに横山の新作と思って

読んでいった。

するとどうだ。これまでの横山の、独特の警察組織への切り口とはまた全然違う。

非常に優れた推理小説で有り、サスペンスである、さらに青春ドラマでもあり大変に楽しめた。

時効間近の高校教諭自殺偽装殺人事件に、昭和の大事件「三億円強奪事件」を絡め、そこに高校の同級生3名

の15年後の人生を投影する。

大変重層的で、しかも読みやすく、一度手に取ると一気に読み終えるまで手放すことができない。

これが処女作であると言う事は、とりもなおさず横山のその後の発展が占える事であるし、同時に本作品は

発表当時のものに今の横山が十分に手を入れたものであるとの事で、その完成度が一段と上がっている。

読者にとっては、なんとも贅沢な喜びと言えるだろう。

謎解きも大変おもしろく、昭和の世相もなつかしい。様々に楽しめる好著と言えるでしょう。

「昭和」を感じさせてくれる
1991年、第9囘 「サントリーミステリー大賞」 佳作賞受賞作。

横山秀夫の原點とも云はれ、デビュー前に書かれた「幻の處女作」とも云はれる作品である。

ただし、2005年に光文社から刊行されるにあたつて、作者による改稿がなされてゐる。

1975年12月、不良高校生(死語?)の3人組がテスト問題を盜み出す計畫を立てた。

名付けて「ルパン作戰」といふ。

そして、その作戰實行當夜の9日に、一人の女性教師が學校の屋上から墜落死してゐた。

この作品の「現在」は1990年の12月9日。

すなはち、女性教師の墜落死から15年、もし殺人事件であれば時效が完成する日だ。

その前夜、當局に「あの事件は殺人事件だ」といふタレコミがあつたらしく、搜査員たちは、わづか1日の間で時效を迎へる事件を搜査する破目になつたのだ。

搜査員たちは、「ルパン作戰」を實行した當時の高校生を探し出し、署に連行して當時のことを語らせる。

果たして、女性教師の墜落死はほんたうに殺人事件だつたのか?

犯人はいつたい誰なのか?

迫る時效完成時間との勝負。

この作品を讀んでゐて、最初に違和感を感じたのは、取り調べ室で調書を記録する美しい婦人警官の存在。

あまりにも、登場した際の描寫が丁寧で存在感がある。

もちろん、彼女の存在はあとで大きな役割を果たすことになる。

ストーリーが命といふ作品なので、ここであまり書くつもりはない。

ただ、1968年に起つた3億円強奪事件が關係してくるといふことだけは書いておきたい。

私の少年時代と重なる時代、「昭和」を感じさせる、どことなく懷かしいやうな作品だつた。

スピードに乗って一気に読破!
この小説がデビューのきっかけになったらしいけど、出版されたのは

15年後。

3億円事件も上手く絡ませながら高度な伏線を張った文章は緊張感を

倍増させて終わりまで一気に読ませてくれた。

推理小説とか全然興味なかったけど、横山秀夫、クセになりそう。
ルパンの消息 (カッパノベルス)

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顔 FACE (徳間文庫)

顔 FACE (徳間文庫)横山 秀夫不器用
 本書の主人公・平野瑞穂は生き方が不器用な為、自分の希望する部署からある事件をきっかけに左遷させられしまう。次々と起こる事件に誠実に、ひたむきに、不器用にぶつかっていく瑞穂は警察官として、そして、人として成長していく。

 瑞穂に限らず、横山秀夫が描く主人公達、全員に共通することは”不器用”な事(無論、手先とかではなく、生き方や性格が)ではないだろうか?作者・横山秀夫も自分が創作した人物達に負けず劣らずに”不器用”な人物なのだろう。なんたって、日本で一番有名な文学賞に向かって喧嘩するぐらいだし・・・。もちろん、私もそんな不器用な横山秀夫をこれからも読み続けたい。

職場で悩む、女性の部下をもつ管理職の方に
 『陰の季節』の一遍『黒い線』からスピンオフした連作短編集。非日常を切り取

る小説の中で連作短編集は非日常を描いていますが、長編よりやや日常的、小粒な

事件が連なっています。県警がひっくり返るような大事件は起きなくても主人公は

新しい経験を重ね段階的に成長していく姿を追っていくのは興味深いです。

  所轄警察署を大企業の地方支店と考えると男性の考え方や女性に対する期待が

民間企業と20年くらいのギャップを感じました。確かに登場する警察官は職務に忠

実で熱心に取り組んでいる事が伺われます。しかし彼らの発言の端々に「古さ」を

感じてしまうのは私だけでしょうか。一般企業であれば市場にさらされて当の昔に

淘汰されてもおかしくない組織なのですが、改善をしなくても生き残ることのでき

るシステムが彼らを現状にとどめていると考えます。同じような多くの公務員組織

が制度疲労を起こしている気がしてなりません。国は優秀な人材の使い捨てをやめ

て、キャリアの警視クラスを署長に据えたら少し良くなるのではないでしょうか?

 婦人警官が主人公の作品は少ないので、平野瑞穗の成長物語として読むと真剣に

職務と向き合う女性がどんなモチベーションで仕事をしているのか、おじさんにも

理解できるよう分かりやすく描いてあります。やる気のある女性の部下をどう扱っ

て良いか戸惑っている管理職の方にもお奨めの一冊です。

婦警も普通の女の子なら、警察も普通の企業組織。
警察をテーマにした小説は少なくない。というか、多い。

この作品の主人公は23歳の婦警。

若い婦警が主人公の小説となると、ぐっと数は少なくなるように思う。

さらにこの作品の異色さとして「主人公が同じ職場にずっといない」ことが挙げられる。

大体警察モノは主人公が刑事で、犯人を追い詰める捜査の一線で活躍する人間ばかりだ。

ところがこの作品の主人公は

「目撃者の情報から似顔絵を作成する鑑識」→「マスコミ対策本部」→「テレフォン相談員」→「現場刑事」

と物語のたびに職場が変わっていく。

すべて警察内部の都合。企業となんら変わりは無い、突然の人事異動。

それは「女性軽視」の現場であるがゆえ、一般企業よりひどいものかもしれない。

それでもひとつひとつの「業務」の内容をわかりやすく、魅力的に描く作者の技量はさすが。

特に最後の「現場刑事」をこなしている最中犯人を追い詰めるくだりは文章に疾走感があり、目が離せなくなる。

☆マイナスの理由は最後の「現場刑事」の締め部分がやや芝居臭かったこと、そしてエピローグが主人公目線でなかったこと。

エピローグを他人の目から語ることによって物語がフェードアウトしていく様子はうまい表現だが、

その語ってる相手が「ほんの一日」ペアを組んだだけ(少なくとも小説上では)だったことに違和感を感じる。

主人公と深い繋がりのある七尾あたりが適任だったと思う。

それを避けたあたり作者の意図があるのかもしれないが、少なくとも私には味気なく感じられた。

疾走感あるラストだっただけに、あまりの味気なさに毒気を抜かれてしまったというのが正しいのかもしれない。
顔 FACE (徳間文庫)

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動機 ■

動機 (文春文庫)横山 秀夫「別角度」から描かれたきわめて斬新な警察小説の生誕!以前から横山秀夫作品がテレビドラマ化されていたことは知っていたし、「影の季節」というどことなく殺伐とした印象を与えるタイトルも頭の片隅に残っていた。「著書『影の季節』と『動機』あわせて100万部突破した!」という黒帯の白抜きされた言葉に思わず手が伸びた。どちらの作品からもとても斬新な感覚を与えられ、目から鱗が落ちるような思いであった。

犯人逮捕に全力投入する刑事部門の活躍ではなく、警務課、監察課そして秘書課といった「別角度」から、警察機構の内部(正確には「管理部門」で働く人間の内面)に潜む赤裸々なドラマを、あたかもそこに勤務している人間であるかのようなタッチで描かれた短編小説に惹き込まれた。特に印象深かった作品は、『動機』所収の「動機」と「逆転の夏」の二作品である。どちらの作品も、「家族」というかけがえのない財産を守るという使命に邁進する男(ここでは父親)の姿が活写されている。テーマや切り口の斬新さもさることながら、横山作品に自然に惹き込まれてゆくのは、やはり「自分が現場にいる人間」であるかのような、その人間の感情や意志を生々しく綴る「文体」にもあるような気もするのである。こうして、作品に登場する人物と読者が見事にコラボレーションする、つまり、読者はそこにいる登場人物と一体化してしまうわけだ。先行きが読めないという緊張感はそれによって更に助長される。『動機』では、警察官にとどまらず、殺人を犯した前科物、事件記者そして裁判長という登場人物にまで拡張され、新たな作風をいかんなく醸し出している。ドラマ化された作品を少しは見ているはずであるが、やはり原作そのものを読まないと臨場感を理解できない。

テレビ放送の鑑賞という行為はたぶんに受動的であるのに対し、読書は能動的である(少なくとも「そうあろうとする」)からである。本書をはじめ、多くの作品が読者の目に触れることを願いたい。

他の収録作品も珠玉
 本書には4編の短編が収録されています。短編集のタイトルとなっている『動機』は

以前の短編集『陰の季節』と同様、警察警務部(管理部門)の視点で警察組織を描いています。

各方面で絶賛された作品です。短編にしては登場人物が多く、各人丁寧に書かれて

いるのですが私としては人物描写が中途半端に感じました。短編であれば思い切って

主人公に描写を絞り込んだ方が良いように思いました。短編がうまいという事で

当時は短編の依頼が多かったからでしょうか、『動機』からは作者の長編への

意欲が感じられます。

 後半の『ネタ元』、『密室の人』は作者の短編のよさが存分に出ていると思います。

刑事事件をキーワードとして一方は社会部(事件)記者、もう一方は裁判官に

スポットを当てています。ともに一般人にとっては、ニュースを通してしか知るこ

とのない彼らが、苦悩しながら懸命に人として働き、愛し、苦しんでいる姿が

フィクションを通して伝わってきました。

横山秀夫初体験!・・・
表題作の「動機」を読み終えたとき、思わずうーんと唸ってしまいました。
いびき 肌荒れ 注目
短編集を読みながら、この話の残りのページ数はどれくらいだろうとつい何度も数えてしまうのが私のいつもの癖なのですが、

謎が謎を呼ぶばかりで一向に結末が見えてこない複雑怪奇な展開に「おいおい、もう残り何ページもないのにどうやって解決するんだよぉ?」

なんていう妙なドキドキ感に包まていると、最後の最後にこれでもかという怒涛の大どんでん返しで落着。

ラストの僅か数ページで大逆転のエンディングに持ち込むその豪快さ(強引さと呼ぶ人も中にはいそうですが・・・)は、

ついぞお目にかかったことがないものでかなりのインパクトでした。

「逆転の夏」「ネタ元」はイマイチでしたが、最終話の「密室の人」は意表を突く結末で

ふたたびどぎもをぬかれちゃいました。これからしばらくは横山ワールドにどっぷりはまってしまいそうな予感です。

動機 (文春文庫)

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看守眼 (JOY NOVELS)

看守眼 (JOY NOVELS)横山 秀夫プロットに無理がある
「九谷エミ子が殺されたふりをして失踪すること」自体、設定に無理があるような気がします。新しい戸籍を買って別人になるならまだしも、暴力夫や義父から逃れるためであれば、わざわざこんなめんどくさい方法をとらずとも、事故死に見せかける方法はいくらでもあります。「策士策に溺れ」ているような印象を横山氏に受けるのは私だけでしょうか。

単純に考えても、自分が殺されたことになっていたら、医者にもかかれず(保険証がない)、住民票さえとることができません。そんな不便な人生を送るためにこんな回りくどい方法を考える人がいるとは思えません。

無理して複雑な事件に仕立て上げるよりも、単純でもいいので、人の琴線にふれるような小説を横山氏には期待したいところです。

一気に読める短編集
 今が旬の横山秀夫。期待は裏切らない。『半落ち』で大ブレークしたが、著者の醍醐味は短編集で味わえる、と断言したい。

『動機』を読んだときの鮮烈さがここにある。

 全6編。「国家公務員」にからむ、それぞれの主人公の顛末。

 あえて1つ選ぶなら『口癖』。家裁調停委員の中年主婦、ゆき江。離婚調停に現れたのは、娘の高校時代の級友だった…。

 オチは、横山が得意とするところ。短編集では軽いジャブのようでいて鋭いダメージ。

 一気に読める短編集。

わかっていながら
あまり同一作者を賞賛するのも憚れるが

やっぱりこの作者の短編集は「凄い」の一言。

シンプルかつ奥行きのある作品群は

まさに「筆力」の賜物。

常にハズレのない作家。

素直に脱帽。
看守眼 (JOY NOVELS)

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臨場 (光文社文庫 よ 14-1)

臨場 (光文社文庫 よ 14-1)横山 秀夫生涯一検死官の連作短編集
 異動を拒み、生涯一検死官に徹する倉石警視の連作短編集。検死、死因の向こうに、それぞれの人間模様が透けてみえる。

 ストーリー的にやや強引な面があるが、警察小説として十分に楽しめる。横山節は健在。

 

面白い、、、、短編集
横山秀夫の描く世界は、考え落ちのようなところがあり、作品の成功の切れ味の良さは最後の数行で決まる。

本書は、終身検視官を標榜する倉石警視の短編集であるがかなり読ませる。

パトリシアコーンウェルの検視官シリーズもあるが、流石面白さではこちらに軍配が挙がる。

ガリレオの次はこれのドラマ化が予感される。

短いプロットが短く感じられない深さがあった。

主人公の魅力がクセになる。
警察において「臨場」とは、事件現場に臨んで、初動捜査に当たる事を指す。

つまり、事件がおきて間もない現場で何かを見つける眼力が必要とされる。

この物語の主人公である検視官・倉石が現場を見る眼の確かさは、多くの刑事たちを救い、

事件を解決に導いて来た。有能でありながら、大先輩のベテランにもタメ口、酒も女も

嫌いじゃないし…という、警察組織から見ると、扱いにくい男でもあるのだが

そこが人間的には魅力だったりもする。

そんな倉石が、さまざまな事件現場から、被害者の人生、加害者の動機など

多くの情報を読み取っていくスリリングなプロセスも魅力だが、一見口が悪く

ぶっきらぼうなところもある倉石が見せる不器用な優しさ、男っぽさにも

読んでいるうちに心惹かれる。横山さんの警察小説の連作短編で

ハズレがないのはいつものことだが、「臨場」の場合、

倉石、というぶっとい縦糸が背骨のように物語を支え、

横糸としてさまざまな事件やその関係者、警察の同僚の

人生が織り込まれて、なんとも複雑で見飽きない模様を描き出している。

ミステリーとして最高レベルなのはいうまでもなく、「臨場」に限っては、

ハードボイルド小説としても見事な完成度だと思う。

今まで、同性に横山秀夫を勧めるのってどうかしら?と思っていたの

ですが(私は女子です)このツンデレで男っぽい倉石さんが素敵なの!と

ポイントを添えつつ、横山作品初心者の女子にお薦めしてみたく

なってしまった1冊です。

臨場 (光文社文庫 よ 14-1)

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クライマーズ・ハイ (文春文庫)

クライマーズ・ハイ (文春文庫)横山 秀夫命の重さと報道のあり方を問う本格社会派小説の真髄!
本作品は横山秀夫の18番ではない。1985年の御巣鷹での飛行機墜落事故の全権デスクを任された男、悠木和雅をめぐる「事件記者ドラマ」ともいうべき大作である。帯には「心を揺さぶる横山秀夫の最高峰」という表題が付されている。本当にそうか、読んで確かめてみる必要があった。途中で、「これが最高傑作?読むのやめようか」と躊躇った。しかし最後まで読むしかないと思い直した。正解だった。ぐんぐん内容の濃さが増してゆく。全権デスクとしての誇り・苦悩・苛立ちといった、さまざまな人間の内面心理の克明な描写が、「自分がデスクにでもなった」気分へとテンションを高めてゆく。後半の読書スピードは速かった。飛行機墜落原因のスクープを突き止めながらもその掲載を見送り、他社に抜かれた時の失望感と後悔の念、時折挿入される友人の息子との臨場感溢れる登山状況とそこでの会話、墜落事件を社会面トップで扱い続けてきた悠木の前に現れた女子大生の生々しい言葉「人の命って、大きい命と小さい命があるんですね」(406頁)など、十分に読み応えがあり、そして読者であるわれわれに真っ向から問いかけてくる「命の重さ」と「報道というもののあり方」。かつて上毛新聞記者であった作者ならではの切実な問題意識に違いない。全権デスクによる、「どの命も等価だと口先で言いつつ、メディアが人を選別し、等級化し、命の重い軽いを決めつけ、その価値観を世の中に押し付けてきた」(410頁)という心の呟きは、作者自身が直面した状況を端的に述べた言葉ではないかと思うのだ。本書には余計な講釈は必要ない。深い感銘を受ける傑作(いや最高傑作とみなしてよい)である。多くの方が「読了」することを切望する次第だ。「クライマーズ・ハイ。一心に上を見上げ、脇目も振らずにただひたすら登り続ける。そんな一生を送れたらいいと思うようになった」(462頁)という文章で本文を締めくくりたい。

心拍数上昇
読み始めたら止まらなくなって、一気に読んでしまいました。
それくらい迫力ある男のドラマです。頁をめくる毎に心拍数が上昇
するのを感じました。読後、本作が『幻の直木賞受賞作』と言われる
所以を知ってますます感動致しました。日航機事故を知らない世代
の方達にも是非読んで頂きたいです。

マスコミ内幕本
岩壁登攀とマスコミ現場の同時進行。

山の崇高感でうまく中和されているが、たださえ暑苦しいマスコミの内情を筆者の思いも込めてくどく書いている。つまり暑苦しい。作品のウケを犠牲にしても書きたかったということだろう。

しかし、マスコミというものの勉強になる。遺族のところに写真をもらいに行くのを「新聞の記録性を高めることで再発防止に資する」と正当化する思考回路などは理解不能だがそうとでも思わねばやっておられまい。発表半日前のすっぱ抜き合戦なども一般市民には何の意味もなく、公器の使命とも何の関連もない。ただ人より早く、他社より早く、という獣性こそがマスコミの本質であり、原動力なのだということが感じられた。

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

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第三の時効 (集英社文庫)

第三の時効 (集英社文庫)横山 秀夫短編でも上質
「動機」、「陰の季節」を読みましたが、この「第三の時効」が最も警察小説の真髄であると感じました。

他の作者とは異なる視点から書いていますし、短編でも内容は吟味された文章で読み易く

人間模様がリアルさを醸し出している作品でした。

今、「深追い」を読んでいます。

すごい!
派手なアクションシーンがあるわけでも、

捻くれたトリックがあるわけでもないのに、

グングン引き込まれました。

そのことに非常に感動しました。

無駄のない引き締まった構成
「動機」よりも面白かった。「動機」よりもオーソドックスに犯人と刑事が対峙している。彼らのキャラクターがどれも秀逸なのだ。ハイエナのような容疑者(逆に刑事をウタわせてしまう)、オオカミを連想させる刑事(楠見)、幼時の凄まじいトラウマを克服する過程でヒョウキン者の仮面を付けた刑事と、同じくヒョウキン者の仮面を付けたサイコパス型の容疑者の対決など。人物造型と事件の陰惨さとその解決とが、これ以上考えられぬほど緊密に三位一体化している。話の結構が見事で、謎の解明にも連立方程式を解くような鮮やかさがある。会話が実に上手く、会話だけで人物の顔や雰囲気が目に浮かぶ。

ところで「半落ち」で直木賞受賞を逸した理由が少々気になる。やはり、なるべく警察や検察内部の事情を正確に伝えてほしい。小説には特異な社会(警察とか銀行、病院、在日米軍など)や特異な歴史的事件を、当事者のように疑似体験させてくれるという機能がある。そして横山氏の読者は単に謎解きだけでなく、警察・検察・裁判所・新聞社・地方議会などの実態を疑似体験させてくれることをも期待している。
第三の時効 (集英社文庫)

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